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研究背景
現在、世界各地で都市化が進行し、それに伴う生物多様性の低下が深刻化しています。急激かつ大規模な環境の変化を伴う都市化は、今や生物の絶滅を引き起こす主な要因になっています。しかし、人間活動によって多くの種が数を減らしている一方で、都市といった極端に人工的な環境に進出してそこで上手く暮らしている生物も少なくありません。彼らは、行動や生活様式を変化させることで環境の変化に対応していることが分かってきました。私は、都市に生息する野生動物 (特にエゾリス) に着目することで、彼らの人為環境に対する適応や順応様式の解明を目指しています (Urban squirrel project)。例えば、都市部の公園と郊外の森林で暮らすエゾリスの様々な行動や生活パターンを比較することで、都市化が生物に与える影響を調べています。特に、人と野生動物の関わりと深く関連する、人なれが生じるメカニズムや、人なれが野生動物・人間社会にもたらす波及効果についても研究を行っています。また、共同研究を通じてエゾリスの生理的、動物認知学的な側面から、都市化の影響を明らかにすることに加えて、そうした知見をもとに都市計画への提言を目指した研究にも取り組んでいます。2019年からは、北米のロッキー山脈を舞台に、アウトドア活動が野生動物にもたらすリスク (人馴れのリスク) について、キバラマーモットを用いて研究を始めました。基礎科学と応用科学の両面を意識しながら、多面的な研究アプローチから、身近な生物との上手い付き合い方について日々模索しています。
Keywords: Urban ecology, Behavioral ecology, Animal cognition, Habituation to human, Ecotourism, Urban planning


Projects
・Urban Red Squirrel project (2013年~現在) >>詳細はこちら
北海道帯広市を舞台に、そこに生息するエゾリスに着目して、野生動物の都市適応の解明を目的とした研究プロジェクトで
す。2013年、私が修士課程の学生だった時に始めました。これまで、のべ600頭以上のエゾリスに標識を装着して、個体ベースでの研究を行ってきました。都市という特殊な環境において、長期的に個体識別を元にした詳細な観察と様々なデータを収集する調査システムは、日本国内はおろか世界的にも非常に少ないです。また、このプロジェクトでは、複数の大学と様々な分野の研究者が集まり、分野横断的に生物の都市適応の解明を目指しています。現在、生態学・動物認知学・生理学・寄生虫学・都市計画の研究者が集まって、日々活発に研究議論を交わしています。互いにアイディアを出し合ったり役割分担をすることで、独自の視点で研究を進めて着実に成果を出していけたらと思っています。さらに、メディア・講演会を中心に、研究の成果を様々な形で社会に発信する活動も行っています。また、公園の利用者の方々に"リス通信"を配布することで、多くの人にとってチームの研究活動を、少しでも身近に感じて貰えるような活動にも取り組んでいます。科学と社会を繋ぐことも、私たちが大切にしていることの一つです。
・アウトリーチ活動
研究の成果を社会に分かりやすく発信することは、人と野生動物の共存を目指した社会作りにおいて欠かせません。私は、アウトリーチ活動を通じて、学術と社会を繋ぐことで社会と一緒になって共存の方法を模索したいと考えています。そのため、最低でも一年に一回は市民講演の場でお話をすることをミッションにしています。その中で、単に野生動物やリスに関する知識を伝達するのではなく、自然の仕組みを理解しようとする姿勢やその方法(生態学の神髄)を伝えることを心がけています。また、人と野生動物のちょうどいい関わり方について、市民の方々と一緒に考える場の創造を大切にしています。
・円山リスの会
円山公園を舞台に、餌付けの問題といった人間と野生生物の関係性を考える団体。サイエンスカフェを行なったり、これからは市民参加型の調査も実施予定。
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